老後資金づくりの手段として、耳にする機会が増えた「iDeCo(イデコ)」ですが、「名前は聞いたことがあるけれど、何がそんなにお得なの?」という方も多いはずです。このページでは、iDeCoの基本的な仕組みと税制上のメリット、利用時の注意点を初心者向けに解説します。

iDeCoとはどんな制度か

iDeCoは、個人が自分で掛金を拠出し、用意された運用商品(投資信託や定期預金など)から選んで運用する、私的年金制度です。

公的年金に上乗せする「自分年金」を作る位置付けで、20歳以上65歳未満の多くの人が加入できるよう制度が拡大されています(職業や加入状況によって細かな条件は異なります)。掛金の上限額は職業や企業年金の有無によって変わりますが、毎月一定額を積み立てて60歳以降に受け取るのが基本的な仕組みです。

iDeCoの三つの大きな税制メリット

iDeCoが「税制面で有利」と言われるのは、次の三つのメリットがあるためです。

掛金が全額所得控除になる

iDeCoで拠出した掛金は、全額が所得控除の対象になります。例えば、年間24万円(毎月2万円)の掛金を拠出した場合、その分だけ課税対象となる所得が減り、所得税や住民税の負担が軽くなります。年収や税率によって節税額は異なりますが、「払った掛金の一部が税金の軽減という形で戻ってくる」イメージです。

運用益にも税金がかからない

通常の証券口座では、投資信託や株式で得た売却益・分配金などに、おおよそ20%程度の税金がかかります。しかし、iDeCoの口座内で運用した商品から得られる利益には税金がかからず、全額を再投資に回すことができます。長期運用になればなるほど、この非課税のメリットは大きくなります。

受け取るときにも税制上の優遇がある

60歳以降にiDeCoの資産を受け取る際も、「退職所得控除」や「公的年金等控除」などの仕組みを活用することで、一定額まで税負担を抑えられる可能性があります。受取方法(一時金・年金形式・その組み合わせ)によって適用される控除が異なるため、受取時期が近づいたら具体的なシミュレーションを確認することが重要です。

iDeCoで選べる運用商品と基本的な考え方

iDeCoでは、金融機関ごとに用意されたラインアップの中から、運用商品を自分で選びます。

投資信託と元本確保型商品のバランス

多くの場合、株式や債券に投資する投資信託と、定期預金などの元本確保型商品が用意されています。長期での資産形成を目指すなら、一定割合を投資信託で運用しつつ、リスクを抑えたい部分を元本確保型商品で持つといった組み合わせが一般的です。

長期目線での値動きを前提にする

iDeCoは60歳まで原則引き出せない制度であるため、短期的な値動きに一喜一憂するよりも、「20年・30年といった長い期間で増やしていく」という発想が大切です。世界株インデックスファンドなど、長期の成長が期待される資産クラスに分散投資する商品が、多くの解説で紹介されています。

iDeCoを始めるまでの手続きの流れ

iDeCoの手続きは、勤務先や加入状況によって若干変わりますが、一般的な流れは次のようになります。

  1. iDeCoを取り扱う金融機関(銀行・証券会社・保険会社など)を選ぶ
  2. 金融機関のサイトや窓口から「加入申込書」を取り寄せる、またはオンライン申し込みを行う
  3. 必要事項を記入し、本人確認書類・年金手帳などの必要書類を準備する
  4. 会社員の場合は、事業主証明書など勤務先に記入してもらう書類が必要になることがある
  5. 書類を金融機関に返送し、国民年金基金連合会での手続き完了を待つ
  6. 加入完了後、金融機関のサイトやアプリから、掛金額・拠出方法・運用商品の配分を設定する

申し込みから実際に掛金の拠出が始まるまでには、1〜2か月程度かかることも多いため、「早めに準備しておく」意識が大切です。

iDeCoを利用する際の注意点

税制上のメリットが大きいiDeCoですが、いくつかの注意点もあらかじめ理解しておく必要があります。

原則60歳まで引き出せない

iDeCoの資産は、原則として60歳になるまで引き出すことができません。途中で解約して現金化することが難しいため、生活費や近い将来に使う予定の資金ではなく、「当面使わない長期の余裕資金」で利用することが重要です。

口座管理手数料がかかる場合がある

iDeCoでは、国民年金基金連合会や事務委託先金融機関への手数料のほか、金融機関ごとの口座管理手数料が発生する場合があります。毎月の掛金が少なすぎると、手数料負担が相対的に重く感じられることもあるため、金融機関選びの段階で手数料の有無・金額を確認しておきましょう。

掛金額の変更や停止には手続きが必要

ライフイベントや収入の変化に応じて掛金額を見直したい場合、金融機関を通じて変更手続きが必要になります。一時的に掛金を0円にする「拠出停止」ができるケースもありますが、その間も口座管理手数料は発生することが多いため、状況に応じた判断が求められます。

iDeCoを「税金も味方につけた長期の仕組み」として活用する

iDeCoは、掛金の所得控除・運用益の非課税・受取時の控除という三つの税制メリットにより、老後資金づくりを後押ししてくれる制度です。一方で、60歳まで原則引き出せないという制約もあるため、生活費や短期の貯蓄とはきちんと分けて考える必要があります。

まずは自分が加入できる区分と掛金の上限額を確認し、無理のない金額からスタートしてみる。それが、税制のメリットを活かしながら、将来の自分のための資産をじっくり育てていく第一歩になります。

出典:iDeCo公式サイトRetireWiki.jp「IDeCo」